好きな児童文学と共通点3
これまで同じ題材で2回、ブログを書いてきました。
今回は最終回となる共通点5、6です。
1回、2回の内容は下記をご覧ください。
5つ目の「愛すべき魅力的なキャラクターが登場すること」と、
6つ目の「キャラクターたちの素敵なお名前」は、
それぞれの作品の特徴的なキャラクターやお名前を取り上げつつ、2つまとめて書いて行こうと思います。
この2つは全ての作品に該当していますね。
わたしにとってキャラクターを愛しく思えるかどうかも、物語を読み進める上で重要な要素です。
「不思議の国のアリス」のキャラクターは言わずもがな変わったところがあり、魅力的ですが、その中でもやはり主人公のアリスは目を引きます。
アリスは、話が通じない不思議の国の住人たちにも自分の意見を主張し、言い返し、失礼なことを言ってしまうことさえもあります。
例えば、コーカス・レースの後に動物たちと話をする中で、アリスはネズミ相手に何度も飼いネコ・ダイナの話をしてしまいます。
わざとではないのですが、子どもらしい素直さを持ち、物怖じしないアリスの性格によって、ネズミはかわいそうですが、何とも笑える場面になっています。
また、アリスは、わたしに「Alice」というロマンチックなお名前を教えてくれました。
音はもちろん、アルファベットの並びは、まるで背の順のように左から右へ小さくなっていて、とても綺麗だと思いませんか?
この作品を読んだのは小学校6年生の時ですが、「なんてかわいい名前!」と感動したのを今でも覚えています。
名前という面では、「魔女の宅急便」も思わず声に出したくなるようなお名前を持つキャラクターが登場しますね。
主人公のキキを初め、ジジ、トンボさん、コキリさん……。
他の名前も、カタカナ表記とカ行の音が入っていることが多く、どれも歯切れが良く、子どもに読み聞かせをしたら、すぐに覚えてしまいそうな名前ばかりです。
キャラクターの名前は、物語にリズム感を与えたり、一瞬でその人の顔を思い浮かべさせたりする力を持つ重要な役割を果たしていると、この作品から強く感じます。
名前ではありませんが、エーリヒ・ケストナー氏はあだ名の才能に秀でています。
「教授」、「ちびのディーンスターク」、「道理さん」、「禁煙さん」など特徴をとらえた、面白いあだ名ばかりで、物語の中でも名前にふさわしい働きをしています。
「ダークマテリアルズ黄金の羅針盤」の主人公ライラはアリスに次いで痛快で、憧れの存在です。
最近、初めてこの作品を読んだのですが、ライラの諦めることを知らない強さは、大人になったわたしにはとても眩しく感じられました。
ボルバンガーに連れていかれ、自分の命が危険な状況でも、自分や周りを常に鼓舞する姿も健気でした。
物語を通して一貫していたライラの実行力と頑張りを見てきた読者は、ライラとパンタライモンの成功を確信することができます。
続きを読むのが今からとても楽しみです!
また、この作品においてライラと同じくらい目を引くのはダイモンというオリジナルのキャラクターです。
彼らは見た目も性格も様々ですが、みんな共通してどこか聡いところを持っていて、パートナーの助けをしています。
ダイモンには、人間が十歳になるまでダイモンは姿を変化できる、というおもしろい特性もあります。
その特性を活かし、ライラはパンタライモンに偵察をしてもらったり、身を守ってもらったり、小さな虫になって傍についてもらったりすることができました。
ちなみに、「パンタライモン」もお気に入りな名前の一つです。
「エラゴン」の主人公であるエラゴンは、アラゲイジアという架空の世界のカーヴァホール村に暮らす両親のいない男の子です。
アラゲイジアでは文明はまだ発達していないため、多くの人々は畑を耕したり、狩りをしたりして生活しています。
また、この物語では、鍛錬を積んだ者たちによる剣と魔法の闘いが、何度も繰り広げられます。
どれも現代のわたしでは経験しえないことばかりです。
畑仕事は興味があるので、いつか機会があったらやってみたいですが、闘いは嫌ですね。
エラゴンは、激動の時代の中で厳しすぎる境遇の人生を生きながらも、サフィラと共にいることで心身共に強く、逞しくなっていきます。
勇気と強さと優しさを持ちながらも、時々人間らしさを見せるエラゴンは、いつも読者を奮い立たせてくれます。
まだ解決までを読むことができていませんが、きっとエラゴンとサフィラによってアラゲイジアは救われることでしょう。
「サフィラ」も、美しい宝石を思わせるような艶やかな響きを持つお気に入りの名前です。
「クレストマンシーシリーズ」を初め、ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの作品には、性格が極端に誇張されているようなユーモアにあふれたキャラクターが数多く登場します。
特に、キャットの姉である「グウェンドリン」はわたしがこれまで読んできた物語の中で、最も手が付けられないとんでもない女の子でした。
目的を果たすために弟の魔力を問答無用で借りたり、自分の力をアピールするために巨大な虫や不気味なお化けを呼びだしたり。
行動だけでなく性格も豪快で、すぐに癇癪を起したり、弟に当たるような態度を見せたりと、かなり横暴で、最後まで改心することはありません。
常人では書き表せないほどの勢いあるグウェンドリンは、読んでいて疲れてしまうこともあります。
読者を疲れさせるほど、物語の中の人物に真実味を持たせているダイアナさんの表現力にも驚かされますし、
ダイアナさんの手によって生き生きと物語の世界を生きているグウェンドリンは現実の人間よりも強烈な生命力を持っているのでしょう。
グウェンドリンは、「一生忘れることができない」という魅力を持ったキャラクターですね。
「山賊の娘ローニャ」では、元気いっぱいで明るい主人公のローニャも印象に残りますが、それ以上に強いインパクトを持っているのがローニャの父「マッティス」です。
マッティスは異常なまでにローニャを溺愛しており、感情の起伏も激しく、子分たちが怯えるほど怒り散らしたり、泣きわめいたりと子どものような人です。
自分にとって身近な存在だったとしたら、少し困ってしまう人物であり、グウェンドリンと同じタイプの魅力を持ったキャラクターと言えます。
また、この物語の森に住まう不思議な生き物たちも奇妙なものばかりですが、特に異彩を放っているキャラクターは鳥女でしょう。
鋭い鍵鼻に長い髪を持つ女の体は醜い鳥の形をしていて、挿絵を見るだけで気性の荒さが伝わり、ゾクゾクッと悪寒が走るほど不気味です。
鳥女から逃れようとしたローニャとビルクが、川から滝へ落ちそうになる場面は何度読んでも、自分の事のように緊張してしまいます。
簡単に言ってしまえば「敵」のような役割を持つ鳥女もまた、グウェンドリンやマッティスと同じ「二度と忘れられない」という恐怖を感じさせる魅力を持っていますね。
正直に言えば、川の場面はトラウマです。(笑)
このように、キャラクターが持つ良い魅力も悪い魅力も、強烈であればあるほど、物語の独自性と真実味が高まり、展開も盛り上がります。
それぞれの作品で創作された独自性を持った生き物は、時に、ご都合主義になりすぎたり、独りよがりになりすぎることもあります。
しかし、今回取り上げた作品や他の好きな作品でも、キャラクターの個性は良い方向にだけ働いるように感じます。
前回の「読んでみたい児童文学とファンタジー小説」で紹介した作品にも、魅力にあふれたキャラクターがたくさん登場することでしょう。
彼らに導かれながら、物語の中を旅するのが楽しみです。
3回に渡って、自分の好きな児童文学を用いて、好きな作品の共通点について考えてきました。
共通点を並べ、分析のようなことをしてわかったことは、どの作品も宝物のように大好きである、という当たり前のようなことでした。
全ての根っこには単純に「好き」という感情がありました。
もちろんこのブログを書いて、後悔したというわけではありません。
ただ、何も御託を並べずに、素直に好きだと思えるものがあることが幸せなことだ、と思いました。
どんな時もわたしを受け入れてくれ、驚きと楽しさと愛情に満ちている児童文学たちに、心からの感謝を伝えたいです。
ありがとうございます。
また、まだ右も左もわからない状態で始めたブログを読んでくださった皆様も、ありがとうございます。
わたしのブログを読んで、一人でも多くの方に、わたしが好きな児童文学の魅力が伝わっていたら嬉しいです。
本当に素敵な作品ばかりです。
何より、わたしが好きな作品の多くは愛情に満ちています。
あの人に喜んでほしい、子どもたちに楽しんでほしい、救いたい、そんな優しい気持ちで書かれた作品が多いのです。
その愛情をどこかで感じ取り、穏やかな気持ちになっていただけたら、本当に嬉しいです。
これからも好きな作品について楽しく書いて行こうと思います。
ありがとうございました。