花束を持ったゾウ

好きなものについて楽しく書く

読書記録5「賢女ひきいる魔法の旅は」

明けましておめでとうございます。

気がついたら年が明けてもう一か月が終わろうとしています。

驚きですね。

今年も楽しく本を読んで、楽しくブログを書こうと思います。

よろしくお願いします。

 

新年一冊目、通算五冊目となる読書記録は

賢女ひきいる魔法の旅は」です。

大好きなダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの最後の作品です。

妹のアーシュラさんが奮闘してくださったおかげで読むことができることに

まずは感謝を申し上げたいです。

ありがとうございます。

「楽しかった」の一言に尽きる最高の大団円でした。

honto.jp

 

※以下、ネタバレあり

 

物語を読むとき、基本的に、誰かに感情移入することはありません。

誰かの人生や出来事の軌跡を見せてもらっている

という感覚に近いです。

この作品は特にそうで、エイリーンから話を聞いているような感覚でした。

語り口調が度々挟まれるから、というのもありますが。

 

それにもかかわらず、ダイアナさんとアーシュラさんの活き活きとした文章によって

その場で起こっていることを目の当たりにしているような臨場感も感じられました。

 

つまり、話を聞かせてもらっている感覚と、目の前で一緒に経験している感覚が

上手に両立されていたということです。

この手の作品は本当にすごいなと思います。

読者を置いてきぼりにするわけでも、巻き込みすぎるわけでもなく、ちょうどいい塩梅を保ち続ける。

素晴らしい技術ですね。

特にわたしのような想像力が豊かで、怖がりな人間からすると

一緒に経験している感覚の時は「こんな恐ろしいことが!」と身震いしてしまいますが、

同時に、話を聞かせてもらっている感覚を味わえると、

「でも誰かに話せるってことは主人公たちは助かるんだ」と安心することができます。

 

物語の内容としては、旅というだけあって苦しい場面が多く、辛かったです。

旅の荷物が使い物にならなかったりお金が無かったりとひどい仕打ちを受けた上に、

各地でも歓迎されることがほとんどなかったのは、わたしまで悲しくなりました。

わたしが旅の仲間だったら心が折れている、と思う場面が何度もありました。

 

ダイアナさんの描く悪役は、真に憎たらしい人ばかりなのも辛さを助長しました。

特に、歯向かう民をロバに変え、ベック叔母さんに呪いをかけたロマ王女は本当に怖かったです。

佐竹美穂さんの絵もまた怖くて……。

寝る前に読まなければよかった……と思ったほどでした。

怖いものが苦手な人は注意です。

 

そんな辛い旅の中での楽しみは、なんだかんだ仲の良いエイリーンとオゴの掛け合いでした。

自信が無いエイリーンを励まし、時には叱咤してくれ、力を貸してくれるオゴは

自身も寂しく、見下されてばかりの人生を歩んできました。

困ったなぁと思う場面もありましたが、ログラの侵入以降、

オゴがより逞しくなったのは、自分のアイデンティティを得て

自尊心や自己愛が深まった証拠だろうと思い、とても嬉しかったです。

 

終盤では、エイリーンとオゴの絆が強くなっていることや、互いが精神的な支えになっていることが感じられ、とても微笑ましい気持ちになりました。

不安な場面でしたが、とても安心して読み進めることができたのは

きっと二人のこれまでの軌跡のおかげでしょう。

二人がいれば大丈夫だと思わせてくれました。

最終的に結ばれる二人は、夫婦であり、戦友であり、親友であり、伴侶なのだろうと思います。

そんな相手がいたら無敵な気持ちになれそうですね。

 

この作品はわたしがこれまで読んだダイアナさんの作品の中で

最も規模の大きな身勝手合戦だったように思います。

自分の地位のことしか考えていない者が上に立ち、国や民や守護獣まで巻き込んでいる!

おぞましい世界です。

最後にこんな身勝手な人ばかりが登場する作品を書いたのには、

何か意味があるのでしょうか。

 

最後までダイアナさんが書いたわけではないので、

もしかすると終わり方も伝えないことも、違うのかもしれません。

でもわたしはこの物語から、

努力と愛情は報われる」と感じました。

ダイアナさんの作品全てを読んでいるわけではないので確かなことは言えませんが、

「努力と愛情は報われる」ということを、これまで読んだダイアナさんの作品から感じています。

ですからきっと、ダイアナさんが最後まで書いたとしても

このメッセージは感じられたのではないかと思います。

 

残念ながら今後ダイアナさんの作品が増えることはありません。

大学生の時にダイアナさんの作品に出会い、衝撃を受けたわたしにとっては

辛いことではあります。

しかし、まだ未読の作品もありますし、何より

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は何度読み返しても初めてと同じくらい楽しい

という素晴らしい特徴を持っています。

だからこれからの人生でも繰り返し読み、生涯の友のように連れ添っていきたいです。

ダイアナさんの作品に出会えて、わたしは幸せです。

この幸せが、より多くの方に広がりますように。