読書記録14「妖怪の子預かります」
テレビをつければ、あのチャンネルでもこのチャンネルでも、ホラー番組が放送される季節になりましたね。
ホラーが大の苦手なわたしにはとても生きづらいです。
そんなひんやりを求めたくなる夏の日の読書記録は著者・廣嶋玲子さんの
「妖怪の子預かります」です。
正直なところ、わたしは妖怪も苦手です。
怖いものはなんでも苦手なので。暗がりも、雷も、大きな音も苦手です。
しかし!
白鷺あおいさんの「大正浪漫横濱魔女学校」シリーズを読み、少しだけ妖怪への恐怖感は薄れ、少しだけ興味が湧きました。
そこで、この作品です!
以下、ネタバレあり
妖怪についての知識はもちろん乏しいわたしですが、登場する妖怪みんながとてもユーモアにあふれ、楽しく読むことができました。
特に好きなのは、梅吉ですね。
小さい見た目、気さくな性格、話し方、全てが可愛らしかったです。
エピソードも他の妖怪と比べると怖さや大変さが少なく、ハラハラせずに楽しめました。
弥助とすごく仲良くなり、途中でも何度か登場したのが微笑ましかったですね。
今後、青い梅を見る度に思い出しそうです。
ストーリーは切なく、悲しい気持ちになりました。
きっとそうなんだろう、と想像して読み進めていた通りの展開だったからこそ、苦しかったです。
できれば想像通りではないといいな、と思っていたので。
弥助が、千弥と玉雪と共に強く生きていく覚悟を決めた場面では、胸が熱くなりました。
人は大切な誰かのために強くなれる生き物なんですね。
弥助かっこいい!
ただ、そんな弥助以上に印象に残ったのは、付喪神を商う商人の十郎でした。
ただならぬ不思議な雰囲気はもちろん、彼の言葉に心を打たれました。
また、自分は間違っていないんだ、と勇気をもらえました。
その言葉がこちらです。(抜粋になります)
「……つらい時は逃げたっていいんだ……」
「……逃げずに踏みとどまれって、よく人は言いますけどね。……人はそれぞれだ。魂がそれぞれ違うんですからね。同じ出来事が起こっても、受け止められる人間もいれば、耐えきれず壊れてしまう人間もいる。壊れるくらいなら、逃げてしまったほうがいい。逃げて逃げて、またどこかで立て直せばいい……」
わたしも十郎のように考え、行動してきた人間です。
この生き方をずるいと思う人もいました。
でも、自分自身を一番わかっていて、一番護れるのは、自分自身です。
「ああ、このままじゃ、壊れてしまう」
そう思ったら、迷いなく逃げてきました。
そして、なんだかんだ生きてこられました。
その生き方を、十郎に認めてもらえたような気がして、とても嬉しかったです。
そして、十郎やわたしのような選択をできない人の勇気に繋がったらいいな、と思いました。
今後もきっと十郎は登場し、活躍してくれるだろうと思います。
登場する度に十郎の考えがたくさんの人に浸透し、誰もが自分を大切にできる世界になったら良いですね。
妖怪のお話を読みたい! と思って手に取った本でしたが、思わぬ収穫もあり、とても有意義でした。
たまには、読まないジャンルを読むと、素敵な出会いがあることを知り、それもまた有意義な発見でした。
これからもたくさんの、色々な本を楽しんでいきます。
ひんやりが欲しい方はぜひ!