花束を持ったゾウ

好きなものについて楽しく書く

読書記録12「どうぶつ会議」

お久しぶりです。音です。元気です。

久しぶりの更新は読書記録12です。

読んだのは、大好きな作家さんの一人、エーリヒ・ケストナーの「どうぶつ会議」です。

honto.jp

エーリヒ・ケストナーさんの作品はほとんど読んでいますが、どうぶつ会議は読んだことがありませんでした。

そして、今回読み、出会えてよかった、と思いました。

ケストナーさんの考えが、全面に押し出された作品でした。

まさかここまで言葉を選んでいないとは、少し驚きもしました。

同時に、この絵本の内容は、多くの人に浸透してほしいため、言葉を選ぶ必要はないとも思いました。

 

平和や子どもの幸せを望むこと、はいつの時代においても、最も重要なことです。

 

それをどうして、言葉を選ぶ必要があるのでしょうか。

堂々と胸を張って、主張するべきことだと感じました。

 

現代にも必要なメッセージに溢れていましたが、わたしが最も強く感じたことは

人間がしっかりしていないと、こうして動物にも迷惑がかかる

というメッセージでした。

本来ならば動物たちは、それぞれの場所で平和に暮らしているはずです。

しかし、子どもたちが苦しんでいる状況を黙って見ていられず、苦難を乗り越えて会議に集まりました。

そんな大変な思いを、もう二度とさせるわけにはいきません。

 

わたしたち人間はもう一度、本当の平和について考えなければいけないと思いました。

 

わたしの思う平和は、

戦争のない世界。

罪のない命が奪われない世界。

全ての生き物が安心して暮らせる場所とおいしい食事が持てる世界。

人間以外の生命(動物や虫や植物)に愛情を持つ世界。

です。

 

簡単な道のりではないと思いますが、この思いを胸に行動していこうと思います。

その一歩として、たくさんの人にこの本を勧めます。そしてどんな風に感じたかを話したいです。

 

最後に、ケストナーさんは本当に強い信念と愛を持ち、創作に真剣に臨んだ方なのだと、改めて思わされました。

そして改めて、ケストナーさんが好きだと思いました。

ケストナーさんの優しさが世界中に広がり、優しい世界になりますように。

読書記録9「サークル・オブ・マジックⅣ 魔法学校再訪/氷の国の宮殿」

3巻がなかなか手に入らず、お預けにされていた冒険もついに終わりを迎えました。

サークル・オブ・マジックの最終巻

サークル・オブ・マジックⅣ 魔法学校再訪/氷の国の宮殿

が読み終わりました。

楽しかった。

寂しい。

この二言に尽きます。

honto.jp

素晴らしい仲間との冒険をランドルと一緒に、楽しむことができました。

そんな冒険の続きがもうないのかと思うと、寂しくてなりません。

もっと続きが書けそうなのに。

今は寂しいの方が強いですね。

読み終わってこんなにも喪失感を持ったのは初めてです。

 

※以下、ネタバレあり

 

今回は二つの大きな出来事があった上に、他の巻よりもややページ数が少なかったにもかかわらず、

どちらのエピソードも読み応えがありました。

 

ディアマンテの治める城付き魔法使いになったランドルは、いずれのエピソードでも少しだけ冒険を求めていました。

平和が一番とわかりつつ冒険を求める彼は生粋の旅人と言えます。

わたしだったらお城でぬくぬく過ごすのに……。笑

 

魔法学校再訪」は、登場人物を疑わなければならず、疲れてしまいました。

 

ウィルフリードことウィルは最初の印象が良かっただけに

悪魔の王子エルムに操られ、危険ことをしている場面にさしかかると、

この子は信じていいのか? と、疑いながら読まなければならず心苦しかったです。

悪魔の仕業で本当に良かったです。

プリン先生まで疑わなければならなくなった時は、「もうやめて~」という気持ちでした。

 

短い中に濃厚な内容が詰め込まれ(まさかゲイマーまでちらつくとは)、

ランドル初め、魔法学校の先生方が協力してエラムを退け、ウィルのお父さんを救う

という筋書きは最終巻にとてもふさわしいと思いました。

誰も欠けずに平穏が戻って本当に良かった!

 

氷の国の宮殿」は大好きなランドルとリースのコンビ愛が主題で、読んでいてとても楽しかったです。

氷の国というのは敵がいる場所のセオリーになりつつありますが、この作品では全ての音が奪われている

という設定が加わり、さらに不気味な雰囲気が文章から伝わってきました。

 

イカの城のシーンは本当に不気味で、読んでいるだけで寒気がしました。

冬に読むと寒さがより身に染みます。

ランドルたちが城に来たことで氷の像に変えられた人々が解放されて、頑張ったかいがあったというものです。

主人公だから仕方がありませんが、ランドルは行く先々で事件に巻き込まれて大変でしたね。

どんなに困難な状況に追い込まれても力を尽くすランドルは、作品を通して一貫していて、とても立派でした。

ひたむきなランドルだからこそ、たくさんの助けも得られるのでしょう。

 

これまでリースはどんな時もランドルのそばを離れずに、常にランドルの味方でいてくれました。

そんなリースの一番の願いである歌唱コンテストの参加に、今度はランドルが同行してくれます。

その片時も離れる気が無い二人の固い友情に、胸が熱くなりました。

お互いがいなければ今の平穏は無かった、お互いにそう思っているのでしょう。

コンテストの話をしているランドル、リース、ウォルターのやりとりは親友同士のやりとりのようでとても微笑ましかったです。

 

この旅にウォルターが同行できなかったのは残念でしたが、代わりデイゴンがでてきたのには驚きと喜びを感じました。

そして、想像通りのツンデレぶりを発揮してくれました。笑

去り際も彼らしかったですね。

 

最後の最後、本当の平穏が訪れたピクニックの場面では、パーッと目の前が開けたのを感じました。

この光景のために、ランドルたちは頑張って来たんだ、と確信しました。

ランドルの傍に、リース、ウォルター、ディアマンテ、そしてマードックがいる。

これ以上の平穏があるでしょうか。

心からお疲れさまでした、と声をかけてあげたくなりました。

そして、この壮大な冒険に連れて行ってくれてありがとう、と伝えたくなりました。

ランドル、本当にありがとう!

わたしは幸せ者です、ランドルたちの影になって見ているだけで冒険を経験できるんですから。

出会えてよかった、そう思える作品でした。

これからたくさんの人に読まれてほしいです。

 

ランドル、リース、ウォルター、サークル・オブ・マジックの全ての登場人物が

これからも本の中で、そして誰かの心の中で平穏に包まれて生き続けますように。

 

 

最後に。

個人的に、ランドルとリースが最後まで友人関係だったこともとても嬉しかったです。

私個人の見解ですが、日本の文学作品には必ずといっていいほど恋愛の要素が含まれています。

それが物語を進める上で必要か不必要かではなく、当然かのように題材の一つに盛り込まれています。

正直に言うと、わたしはその「当然」が苦手でした。

さらに言えば、

子どもの成長は恋愛の先にある、恋愛を経て主人公は大人になる、恋愛感情こそ最も強固なもの

といったメッセージが日本の文学作品には多く感じられ、それも苦手でした。

しかしこの作品に恋愛要素はほとんどなく、

時を経たり、経験を得たり、困難を乗り越えたりすることでランドルは成長していました。

そしてランドルがリースと互いを思い合う気持ちは、友愛も恋愛も超え出た大きな愛でした。

わたしにはそれがとても眩しく、尊く感じられ、読み終えた時、涙が出ました。

なんて素敵な愛情で結ばれているんだろう、と。

四巻ではあまり活躍しませんでしたが、

ランドルとリースにウォルターも加わることで力になる、

という設定にもとても心を掴まれました。

大きな愛で繋がった三人。素敵以外の言葉が見つかりません。

きっとこれからも三人は、三人で一緒に居続けてくれるでしょう。

それがこの物語の中で一番嬉しいことです。

読書記録6「魔法の庭のものがたり2 二代目魔女のハーブティー」

昨日に引き続き、読書記録6です。

アロマの勉強を始めたわたしに叔母が贈ってくれた

あんびるやすこさんの「法の庭のものがたり2 二代目魔女のハーブティー」です。

魔法の庭ものがたり2 二代目魔女のハーブティーの通販/あんびる やすこ/あんびる やすこ - 紙の本:honto本の通販ストア

honto.jp

※以下、ネタバレあり

 

ジャレットの魅力的な長い髪や、自分を省みてひたむきに努力する姿は、

主な読者である子どもの憧れになるだろうなと思いました。

自分を良く見せるために変わったお茶を作ろうとした場面は、

大人でもこういう時あるなぁ、と耳が痛くなりました。

落ち込んでいるジャレットに、「誰でもやってしまうことだよ」と声をかけて揚げたかったです。

しかしジャレットは自分の間違いに自分で気づき、それを自ら改善しました。

自分の非を認めることは、なかなかできることではありません。

かかしへの思いやりが、ジャレットの「成長」を促した、というストーリーに心が温かくなりました。

 

この物語の素晴らしい点は、実践できるアロマの知識にもあると感じました。

タイトルにもあるハーブティーはもちろん、ラベンダーのサシェやしもやけの薬など

どれも実際に使えそうなものが登場しています。

心温まる物語の中に度々差し込まれるアロマの知識は、読者に自然と身に着くでしょう。

サシェの作り方は、巻末にてかわいいイラストで紹介されています。

ジャレットに教わりながらわたしも作ろう! と思いました。

気になる方はぜひ!

 

物語を通して、一つの軸となる「誰かを思って行動することは幸せで、力がみなぎる

というメッセージが込められているように感じました。

ジャレットはバーボアさんやスーやかかしの。

スーはスーのママの。

バーボアさんはジャレットやスーの。

かかしはスーの。

六匹のネコたちはジャレットの。

みんな、誰かのために行動し、優しさを分け合っている

とても美しい世界で、涙が出ました。

こんな素晴らしい作品は、わたしなんかが紹介するまでもないかもしれませんが、

たくさんの方に読まれてほしいと強く思います。

たくさんの方がこの作品を読み、思いやりの気持ちを持てば、

わたしたちの世界もジャレットたちの世界と同じくらい優しい世界になる気がします。

 

児童文学には学ぶ事や気づかされる事ばかりが詰まっています。

これからも素敵な児童文学との出会いがありますように。

読書記録5「賢女ひきいる魔法の旅は」

明けましておめでとうございます。

気がついたら年が明けてもう一か月が終わろうとしています。

驚きですね。

今年も楽しく本を読んで、楽しくブログを書こうと思います。

よろしくお願いします。

 

新年一冊目、通算五冊目となる読書記録は

賢女ひきいる魔法の旅は」です。

大好きなダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの最後の作品です。

妹のアーシュラさんが奮闘してくださったおかげで読むことができることに

まずは感謝を申し上げたいです。

ありがとうございます。

「楽しかった」の一言に尽きる最高の大団円でした。

honto.jp

 

※以下、ネタバレあり

 

物語を読むとき、基本的に、誰かに感情移入することはありません。

誰かの人生や出来事の軌跡を見せてもらっている

という感覚に近いです。

この作品は特にそうで、エイリーンから話を聞いているような感覚でした。

語り口調が度々挟まれるから、というのもありますが。

 

それにもかかわらず、ダイアナさんとアーシュラさんの活き活きとした文章によって

その場で起こっていることを目の当たりにしているような臨場感も感じられました。

 

つまり、話を聞かせてもらっている感覚と、目の前で一緒に経験している感覚が

上手に両立されていたということです。

この手の作品は本当にすごいなと思います。

読者を置いてきぼりにするわけでも、巻き込みすぎるわけでもなく、ちょうどいい塩梅を保ち続ける。

素晴らしい技術ですね。

特にわたしのような想像力が豊かで、怖がりな人間からすると

一緒に経験している感覚の時は「こんな恐ろしいことが!」と身震いしてしまいますが、

同時に、話を聞かせてもらっている感覚を味わえると、

「でも誰かに話せるってことは主人公たちは助かるんだ」と安心することができます。

 

物語の内容としては、旅というだけあって苦しい場面が多く、辛かったです。

旅の荷物が使い物にならなかったりお金が無かったりとひどい仕打ちを受けた上に、

各地でも歓迎されることがほとんどなかったのは、わたしまで悲しくなりました。

わたしが旅の仲間だったら心が折れている、と思う場面が何度もありました。

 

ダイアナさんの描く悪役は、真に憎たらしい人ばかりなのも辛さを助長しました。

特に、歯向かう民をロバに変え、ベック叔母さんに呪いをかけたロマ王女は本当に怖かったです。

佐竹美穂さんの絵もまた怖くて……。

寝る前に読まなければよかった……と思ったほどでした。

怖いものが苦手な人は注意です。

 

そんな辛い旅の中での楽しみは、なんだかんだ仲の良いエイリーンとオゴの掛け合いでした。

自信が無いエイリーンを励まし、時には叱咤してくれ、力を貸してくれるオゴは

自身も寂しく、見下されてばかりの人生を歩んできました。

困ったなぁと思う場面もありましたが、ログラの侵入以降、

オゴがより逞しくなったのは、自分のアイデンティティを得て

自尊心や自己愛が深まった証拠だろうと思い、とても嬉しかったです。

 

終盤では、エイリーンとオゴの絆が強くなっていることや、互いが精神的な支えになっていることが感じられ、とても微笑ましい気持ちになりました。

不安な場面でしたが、とても安心して読み進めることができたのは

きっと二人のこれまでの軌跡のおかげでしょう。

二人がいれば大丈夫だと思わせてくれました。

最終的に結ばれる二人は、夫婦であり、戦友であり、親友であり、伴侶なのだろうと思います。

そんな相手がいたら無敵な気持ちになれそうですね。

 

この作品はわたしがこれまで読んだダイアナさんの作品の中で

最も規模の大きな身勝手合戦だったように思います。

自分の地位のことしか考えていない者が上に立ち、国や民や守護獣まで巻き込んでいる!

おぞましい世界です。

最後にこんな身勝手な人ばかりが登場する作品を書いたのには、

何か意味があるのでしょうか。

 

最後までダイアナさんが書いたわけではないので、

もしかすると終わり方も伝えないことも、違うのかもしれません。

でもわたしはこの物語から、

努力と愛情は報われる」と感じました。

ダイアナさんの作品全てを読んでいるわけではないので確かなことは言えませんが、

「努力と愛情は報われる」ということを、これまで読んだダイアナさんの作品から感じています。

ですからきっと、ダイアナさんが最後まで書いたとしても

このメッセージは感じられたのではないかと思います。

 

残念ながら今後ダイアナさんの作品が増えることはありません。

大学生の時にダイアナさんの作品に出会い、衝撃を受けたわたしにとっては

辛いことではあります。

しかし、まだ未読の作品もありますし、何より

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は何度読み返しても初めてと同じくらい楽しい

という素晴らしい特徴を持っています。

だからこれからの人生でも繰り返し読み、生涯の友のように連れ添っていきたいです。

ダイアナさんの作品に出会えて、わたしは幸せです。

この幸せが、より多くの方に広がりますように。

読書記録4「サークル・オブ・マジックⅢブレスランドの平和」

この本について、読書記録をつけられる日が来るとは……。

手に入らずに嘆いていた少し前までの自分に教えてあげたい……。

4冊目は「サークル・オブ・マジックⅢブレスランドの平和」です!

著者はデブラ・ドイルさんです。

honto.jp

ハラハラドキドキからの大団円という物語らしい物語で、とても楽しく読みました。

 

※以下ネタバレあり

 

過去の人間とのかかわりや、誰かの言動の意味が、この巻にかなり集約されていて、

物語の完結を感じさせられました。

 

特に、まさか魔法学校時代の因縁の相手・ゲイマーが登場するとは思いませんでした。

つい先日、一巻を読み返していて、ランドルがゲイマーに意地悪を言われて部屋から出て行く場面に新鮮に腹を立てていたところだったので、怒りは倍増でした。

学校を出ても悪さをしているとは!

時間という最大の自然の摂理に逆らったために、その空間から出られなくなったことは仕方ないとも言えます。

レディ・ブランチの発言には半分同意、半分反対ではありますが。

魔法を使わせないようにする鐘の場面は臨場感があり、読んでいるこちらまで耳が痛くなり、力が抜けるような感覚になりました。

何度も魔法が使えなくなりかけても、誰も欠けることなく守り抜いたランドルは立派でした。

ランドルは魔法使いの自負が強く、「この場を打開できるのは自分だけ」と思いがちなため、目的を果たすために発揮する力が凄まじいです。

そのせいで、危険な目にも度々あいますが、この巻ではほぼ常に、リースとウォルターが傍にいて支えてくれたため、前巻よりは安心して読むことができました。

ランドルが残るなら残る、と言い続けるリースは最高の相棒ですね!

 

ドーン城での戦闘は痛ましいものでした。

安息の地での戦闘で、たくさんの人が亡くなったことを、ランドル自身も悔いていました。

しかしわたしたち読者には、ランドルはできる限りのことをしたように見えました。

ランドルが自分自身にもそう言ってあげられるようになったら、自分を認められたらいいなと思います。

 

最終的にマスターとして承認され、ディアマンテから宮廷魔法使いとして忠誠を求められた場面では泣きそうになりました。

これまでの幾度にもわたるランドルの決死の戦いが思い出されました。

しかも傍には、その戦いでも力になってくれた、宮廷で音楽を奏でるリースと、総帥となったウォルターがいるんですよ!

なんて優しい物語なんでしょう!

わたしは優しい物語が好きです。

頑張ったら報われてほしいです。

平和に近づいた世界でみんな一緒にいられる、花丸のような終わりで、とても嬉しかったです。

 

この平和な終わりから、4巻にどう繋がっていくのかはわかりませんが、早く続きが読みたくて仕方ありません。

でも4巻を読んでしまったら、ランドルたちとの冒険は終わってしまうと思うと、我慢したい気持ちも出てきます。

とりあえず、前の巻を読み返して行こうかな。

 

困難が多い巻ではありましたが、本当に本当に、嬉しい終わりでした!

ランドル、リース、ウォルターの友情に乾杯!

 

追記

メリークリスマスイブですね。

今年もお家で本やパソコンを片手に、ぬくぬく過ごします。

今はテレビで放送されているパディントンの映画を見ながら、このブログを書いていました。

パディントンの原作もいつか読んでみたいです。

読書記録1「ミルドレッドの魔女学校 魔女学校の一年生」

記念すべき初の読書記録は
ミルドレッドの魔女学校 魔女学校の一年生」です。
ずっと読みたかった作品なので、
届いた時から読むのが楽しみでした。
約1日であっという間に読むことができるほど簡潔でしたが、
その内容は想像通り、魔法や不思議に溢れた楽しいものでした。

honto.jp

※以外ネタバレあり

カックル魔女学校に古くからある伝統が興味深かったです。
黒色に統一された制服や、黒い魔法の本、パートナーとなるネコ、など、
魔法好きなら誰もが想像することを、
実際に経験しているミルドレッドが本当に羨ましかったです。

ホウキに乗る、という魔法使いの醍醐味であるシーンは、
なぜあんなにも気持ちが弾むのでしょうか。
しかもこの作品では、自分のネコがホウキに乗れるようにする、
という独特な決まりもありました。

もしわたしがカックル魔女学校の生徒で、
自分のネコをホウキに乗せようものなら、
ネコのかわいさと健気さに泣いてしまうかもしれません。(笑)

中々上達しないネコをカバンに入れて一緒に飛ぶミルドレッドも、
子どもらしい発想でとても微笑ましかったです。


ハロウィーンの祝賀会では、ミルドレッドはひどい目に合いますが、
勇気を出して慣れない魔法を使い、学校を救う
というストーリーにも心が震えました。
ミルドレッドは友達が多い、という設定がありましたが、
その理由はミルドレッドの持つ勇気と実行力、前向きさにあるのでしょう。
わたしもぜひ友達になりたいと思いました。


さらに、この作品の著者であるジル・マーフィさんは、
文章と挿絵のどちらもご自分で書いています
そしてその挿絵が何とも味があります。
挿絵の無い場面のことも想像させるような挿絵なのです。

前半には比較的に怖い挿絵が多く、
本当に暗くて黒い魔女学校が舞台だ、
ということを脳に植えつけられます。

しかし、読み進めるごとに学校らしい場面や、
親友のモードとの仲睦まじい様子が描かれていて、
魔女学校も悪くないかも、と思えてきます。


また、わたしは物語に登場する石造りの建物に目が無いので、
ミルドレッドの部屋や教室のシーンも食い入るように見てしまいました。
棚やテーブルの上、壁にも魔女学校らしいものが隠されていて、
宝探しのような気分でした。

細部にも著者のこだわりが見られる作品は、
読みごたえと見ごたえがあります。

きっと著者の頭の中には、
より具体的な魔女学校の構想があるのでしょう。
全貌を見ることができたら、
興奮で、一時間でも二時間でもその絵を見ている自信があります。


ミルドレッドの魔女学校シリーズは、まだまだ未読のものがあります。

どんな魔法や魔女との出会いが待っているのでしょうか。

早く続きが読みたくて仕方がありません!

好きな児童文学と共通点3

これまで同じ題材で2回、ブログを書いてきました。

今回は最終回となる共通点5、6です。

1回、2回の内容は下記をご覧ください。

好きな児童文学紹介と共通点1 - 花束を持ったゾウ

好きな児童文学と共通点2 - 花束を持ったゾウ

 

5つ目の「愛すべき魅力的なキャラクターが登場すること」と、

6つ目の「キャラクターたちの素敵なお名前」は、

それぞれの作品の特徴的なキャラクターやお名前を取り上げつつ、2つまとめて書いて行こうと思います。

この2つは全ての作品に該当していますね。

わたしにとってキャラクターを愛しく思えるかどうかも、物語を読み進める上で重要な要素です。

 

不思議の国のアリス」のキャラクターは言わずもがな変わったところがあり、魅力的ですが、その中でもやはり主人公のアリスは目を引きます。

アリスは、話が通じない不思議の国の住人たちにも自分の意見を主張し、言い返し、失礼なことを言ってしまうことさえもあります。

例えば、コーカス・レースの後に動物たちと話をする中で、アリスはネズミ相手に何度も飼いネコ・ダイナの話をしてしまいます。

わざとではないのですが、子どもらしい素直さを持ち、物怖じしないアリスの性格によって、ネズミはかわいそうですが、何とも笑える場面になっています。

また、アリスは、わたしにAlice」というロマンチックなお名前を教えてくれました。

音はもちろん、アルファベットの並びは、まるで背の順のように左から右へ小さくなっていて、とても綺麗だと思いませんか?

この作品を読んだのは小学校6年生の時ですが、「なんてかわいい名前!」と感動したのを今でも覚えています。

 

名前という面では、「魔女の宅急便」も思わず声に出したくなるようなお名前を持つキャラクターが登場しますね。

主人公のキキを初め、ジジ、トンボさん、コキリさん……。

他の名前も、カタカナ表記とカ行の音が入っていることが多く、どれも歯切れが良く、子どもに読み聞かせをしたら、すぐに覚えてしまいそうな名前ばかりです。

キャラクターの名前は、物語にリズム感を与えたり、一瞬でその人の顔を思い浮かべさせたりする力を持つ重要な役割を果たしていると、この作品から強く感じます。

 

名前ではありませんが、エーリヒ・ケストナー氏はあだ名の才能に秀でています

「教授」、「ちびのディーンスターク」、「道理さん」、「禁煙さん」など特徴をとらえた、面白いあだ名ばかりで、物語の中でも名前にふさわしい働きをしています。

 

ダークマテリアルズ黄金の羅針盤」の主人公ライラはアリスに次いで痛快で、憧れの存在です。

最近、初めてこの作品を読んだのですが、ライラの諦めることを知らない強さは、大人になったわたしにはとても眩しく感じられました

ボルバンガーに連れていかれ、自分の命が危険な状況でも、自分や周りを常に鼓舞する姿も健気でした。

物語を通して一貫していたライラの実行力と頑張りを見てきた読者は、ライラとパンタライモンの成功を確信することができます。

続きを読むのが今からとても楽しみです!

また、この作品においてライラと同じくらい目を引くのはダイモンというオリジナルのキャラクターです。

彼らは見た目も性格も様々ですが、みんな共通してどこか聡いところを持っていて、パートナーの助けをしています。

ダイモンには、人間が十歳になるまでダイモンは姿を変化できる、というおもしろい特性もあります。

その特性を活かし、ライラはパンタライモンに偵察をしてもらったり、身を守ってもらったり、小さな虫になって傍についてもらったりすることができました。

 ちなみに、「パンタライモン」もお気に入りな名前の一つです。

 

エラゴン」の主人公であるエラゴンは、アラゲイジアという架空の世界のカーヴァホール村に暮らす両親のいない男の子です。

アラゲイジアでは文明はまだ発達していないため、多くの人々は畑を耕したり、狩りをしたりして生活しています。

また、この物語では、鍛錬を積んだ者たちによる剣と魔法の闘いが、何度も繰り広げられます。

どれも現代のわたしでは経験しえないことばかりです。

畑仕事は興味があるので、いつか機会があったらやってみたいですが、闘いは嫌ですね。

エラゴンは、激動の時代の中で厳しすぎる境遇の人生を生きながらも、サフィラと共にいることで心身共に強く、逞しくなっていきます。

勇気と強さと優しさを持ちながらも、時々人間らしさを見せるエラゴンは、いつも読者を奮い立たせてくれます。

まだ解決までを読むことができていませんが、きっとエラゴンとサフィラによってアラゲイジアは救われることでしょう。

サフィラ」も、美しい宝石を思わせるような艶やかな響きを持つお気に入りの名前です。

 

クレストマンシーシリーズ」を初め、ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの作品には、性格が極端に誇張されているようなユーモアにあふれたキャラクターが数多く登場します。

特に、キャットの姉である「グウェンドリン」はわたしがこれまで読んできた物語の中で、最も手が付けられないとんでもない女の子でした。

目的を果たすために弟の魔力を問答無用で借りたり、自分の力をアピールするために巨大な虫や不気味なお化けを呼びだしたり。

行動だけでなく性格も豪快で、すぐに癇癪を起したり、弟に当たるような態度を見せたりと、かなり横暴で、最後まで改心することはありません。

常人では書き表せないほどの勢いあるグウェンドリンは、読んでいて疲れてしまうこともあります。

読者を疲れさせるほど、物語の中の人物に真実味を持たせているダイアナさんの表現力にも驚かされますし、

ダイアナさんの手によって生き生きと物語の世界を生きているグウェンドリンは現実の人間よりも強烈な生命力を持っているのでしょう。

グウェンドリンは、「一生忘れることができない」という魅力を持ったキャラクターですね。

 

山賊の娘ローニャ」では、元気いっぱいで明るい主人公のローニャも印象に残りますが、それ以上に強いインパクトを持っているのがローニャの父「マッティス」です。

マッティスは異常なまでにローニャを溺愛しており、感情の起伏も激しく、子分たちが怯えるほど怒り散らしたり、泣きわめいたりと子どものような人です。

自分にとって身近な存在だったとしたら、少し困ってしまう人物であり、グウェンドリンと同じタイプの魅力を持ったキャラクターと言えます。

また、この物語の森に住まう不思議な生き物たちも奇妙なものばかりですが、特に異彩を放っているキャラクターは鳥女でしょう。

鋭い鍵鼻に長い髪を持つ女の体は醜い鳥の形をしていて、挿絵を見るだけで気性の荒さが伝わり、ゾクゾクッと悪寒が走るほど不気味です。

鳥女から逃れようとしたローニャとビルクが、川から滝へ落ちそうになる場面は何度読んでも、自分の事のように緊張してしまいます。 

簡単に言ってしまえば「敵」のような役割を持つ鳥女もまた、グウェンドリンやマッティスと同じ「二度と忘れられない」という恐怖を感じさせる魅力を持っていますね。

正直に言えば、川の場面はトラウマです。(笑)

 

このように、キャラクターが持つ良い魅力も悪い魅力も、強烈であればあるほど、物語の独自性と真実味が高まり、展開も盛り上がります

それぞれの作品で創作された独自性を持った生き物は、時に、ご都合主義になりすぎたり、独りよがりになりすぎることもあります。

しかし、今回取り上げた作品や他の好きな作品でも、キャラクターの個性は良い方向にだけ働いるように感じます。

前回の「読んでみたい児童文学とファンタジー小説」で紹介した作品にも、魅力にあふれたキャラクターがたくさん登場することでしょう。

彼らに導かれながら、物語の中を旅するのが楽しみです。

 

3回に渡って、自分の好きな児童文学を用いて、好きな作品の共通点について考えてきました。

共通点を並べ、分析のようなことをしてわかったことは、どの作品も宝物のように大好きである、という当たり前のようなことでした。

全ての根っこには単純に「好き」という感情がありました。

もちろんこのブログを書いて、後悔したというわけではありません。

ただ、何も御託を並べずに、素直に好きだと思えるものがあることが幸せなことだ、と思いました。

どんな時もわたしを受け入れてくれ、驚きと楽しさと愛情に満ちている児童文学たちに、心からの感謝を伝えたいです。

ありがとうございます。

 

また、まだ右も左もわからない状態で始めたブログを読んでくださった皆様も、ありがとうございます。

わたしのブログを読んで、一人でも多くの方に、わたしが好きな児童文学の魅力が伝わっていたら嬉しいです。

本当に素敵な作品ばかりです。

何より、わたしが好きな作品の多くは愛情に満ちています

あの人に喜んでほしい、子どもたちに楽しんでほしい、救いたい、そんな優しい気持ちで書かれた作品が多いのです。

その愛情をどこかで感じ取り、穏やかな気持ちになっていただけたら、本当に嬉しいです。

 

これからも好きな作品について楽しく書いて行こうと思います。

ありがとうございました。